イギリス
スチュアート社のアールヌーヴォーの代表的なピーコックウェアの花器です。
リバティ社のためにつくられたものです。
1905年頃のものです。
ピーコックウェア(もしくはピーコック・アイ・アンド・トレイルズ)と呼ばれる緑色の孔雀の羽根(もしくは眼)の形をしたこのアップリケのガラスは、ほとんどがグリーンですが、なかにマルーンのようなものもあります。
トーマス・ウェッブやスティーブンズ&ウィリアムズなども制作しましたが、その代表的なファームはスチュアートです。
この花器もも吹きガラスでその精緻さとバランスはとても美しい作風になっています。
スチュアートのなかでも、最もアーティスティックなものに入ります。
リバティ(Liberty)は今では世界でも有名なイギリスの老舗デパートとなり、アーツ&クラフツ運動のウィリアム・モリスデザインのリバティプリントが人気となっていますが、元々は1875年にアーサー・ラセンビィ・リバティ(1,843〜1,917)が東洋の装飾品や織物や美術工芸品を輸入販売する小さなショップを開いたことにはじまっています。
リバティは1,885年から店舗を拡大し、1,890年にはLiberty&Co.となりました。
1,890年代以降、当時のイギリスの最先端のデザイナーたちとのコラボでアーツ&クラフツやアール・ヌーヴォー、耽美主義の商品を扱い、アーツ&クラフツやアールヌーヴォーなどの美術運動の発展を後押しし、大きく貢献しています。
そして1,920年代にはロンドンでも指折りのショップとなっていったようです。
それまでのビクトリアンのものとは全く違う新しい、斬新なデザインに驚いたことでしょう。
今から100年以上前のものですが、今見てもデザインの新しさを感じます。
精度の高いクリスタルとカッティングで有名なスチュアートはイギリス・ストーブリッジの3大ガラスメーカー(あと2つはスティーブンス&ウィィアムズ、トーマス・ウェッブ)の一つで、創始者であるフレデリック・スチュアート(1,817年〜1,900年)は、11歳でイングランド中西部にあるストーブリッジの「レッドハウスグラスワークス」に入りました。
1,790年頃に建てられた「レッドハウスグラスワークス」のコーン型(円錐形)をした屋根の炉はとても有名で、100フィートもある高さのコーン型になっていて、この円錐形の建物がガラス製作のために広いワークスペースを与え、火をより熱くし、炉内に空気を導くよう設計されたもののようです。
現在はこの建物は美術館となっています。
その後、1,853年にはリチャード・ミルズ、エドワード・ウェッブ、トーマス・ウェッブとレッドハウスグラスワークスのすぐ裏手に新しいコーンを建て、「ワーズレイ、アルバートグラスワークス」と命名しました。
翌年にはトーマス・ウェッブは離れ、その後も一緒に仕事をするパートナーが変わり、何度か改名した後に1,883年にStuart&Sonsとなりました。
1,995年にウェッジウッドの傘下に入りましたが、残念ながら2,001年には廃業しています。