ヨーロッパのガラスメーカーで、第二次大戦前のアールデコ期まで最も高品質なガラス製品を作り続けたガラス会社の最高峰の一つであるバル・サン・ランベール(ベルギー)のジョセフ・シモンの作品です。
バル・サン・ランベールは、アールヌーボー期からも優れた作品を作り続け、アールデコでは群を抜く美しさで、他の高名なヨーロッパメーカーを圧倒しました。
このピンク(金赤)を被せた深いカットグラスのデザインは、ジョセフ・シモンらしい作品となっています。
ジョセフ・シモンは、バル・サン・ランベールのチーフデザイナーでアールデコ期に最も活躍した作家です。
バル・サン・ランベールのアールデコ作品を見て、みなさん一様に感嘆されるのは、そのクリスタルガラスの透明度と質感の高さです。
透明部分の光沢は同時代の他の高名なメーカーのものをも圧倒します。
その透明感に色被せし、まさにアールデコと感じさせるモチーフが彫り出されています。
同じ時代、ボヘミア系のもののなかにこの手法のものが散見されますが、バル・サン・ランベールの品格の比ではありません。
ここに紹介するのはかなり大ぶりな作品ですが、透明部分と金赤のバランス、深いカッティングの絶妙さは、見るものを深い感動に導きます。
ご覧のようにバル・サン・ランベールらしく、ガラスの厚みも非常に厚く鉛分も多いため、かなりの重量がございます。
金赤と透明度の高さ、カッティングの妙が絶妙にバランスしたこの作品ですが、この時期のアールデコ作品に共通しています、底部には「バル・サン・ランベール ベルギー」のエングレービングサインがないものです。
戦後アールデコ時代のものをコピーしたような作品がつくられていますが、それらは正規のデコ作品と比べると評価はかなり落ちます。
そこには「バル・サン・ランベール ベルギー」のエングレービングサインがございます。
1928年の作品です。